『~を相続させる』の遺言と異なる遺産分割協議について 【下野市相続】
こんにちは。
上三川の司法書士の市村です。
今回は、遺言の内容と異なる遺産分割協議ができるかです。
例えば『甲土地をAに相続させる』といった遺言があると
遺産分割方法の指定といいまして、被相続人の死亡とともに甲土地の所有権もAに移転します。
本来、遺言の内容は亡くなった方の最後の意志なので十分に尊重すべきです。
ですので、その協議の内容が相続人の争いを回避するものであれば、被相続人の意思を十分に尊重したものと言えますので
遺言と異なる遺産分割協議は可能です。
【さいたま地裁判例】
特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言がなされた場合には,
当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り,
何らの行為を要せずして,被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該不動産は当該相続人に
相続により承継される。そのような遺言がなされた場合の遺産分割の協議又は審判においては,
当該遺産の承継を参酌して残余の遺産の分割がされることはいうまでもないとしても,
当該遺産については,上記の協議又は審判を経る余地はない。以上が判例の趣旨である。
しかしながら,このような遺言をする被相続人(遺言者)の通常の意思は,
相続をめぐって相続人間に無用な紛争が生ずることを避けることにあるから,
これと異なる内容の遺産分割が全相続人によって協議されたとしても,
直ちに被相続人の意思に反するとはいえない。
被相続人が遺言でこれと異なる遺産分割を禁じている等の事情があれば格別,
そうでなければ,被相続人による拘束を全相続人にまで及ぼす必要はなく,むしろ全相続人の意思が一致するなら,
遺産を承継する当事者たる相続人間の意思を尊重することが妥当である。
法的には,一旦は遺言内容に沿った遺産の帰属が決まるものではあるが,このような遺産分割は,
相続人間における当該遺産の贈与や交換を含む混合契約と解することが可能であるし,
その効果についても通常の遺産分割と同様の取り扱いを認めることが実態に即して簡明である。
また従前から遺言があっても,全相続人によってこれと異なる遺産分割協議は実際に多く行われていたのであり,
ただ事案によって遺産分割協議が難航している実状もあることから,
前記判例は,その迅速で妥当な紛争解決を図るという趣旨から,これを不要としたのであって,
相続人間において,遺言と異なる遺産分割をすることが一切できず,
その遺産分割を無効とする趣旨まで包含していると解することはできないというべきである。
遺産分割協議書の注意点
① 相続人の全員が、相続させる遺言の存在を知った上で遺産分割協議を行う
② 遺言執行者がいる場合には、遺言と異なる遺産分割協議行うことについて承諾を得る。
登記申請上の注意点
① 遺言の内容通りの相続登記
↓
② 遺産分割協議の内容にそった移転登記(贈与、交換など)
※実務上は、申請の際に登記官に遺言と異なる遺産分割協議による所有権移転であることを申請しない限りは
被相続人→遺産分割協議による所有権を取得した相続人への1件の申請が認められています。